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すべての企業が「IT企業」になる時代へ テクノロジーによる破壊的変化に直面する大手企業が進むべき道とは

ITバブル以前に創業した会社も、非テク系企業として活動することはもう不可能だと知るべきだ PHOTO: ALICIA TATONE

By Christopher Mims 2018 年 12 月 5 日 10:46 JST

――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト

俺には、大げさに響かない。起業、企業化は、より大きな資本と知恵と情報化センスが必要なようだ。たぶん必要で、ダブルマネージメント(実業とネットビジネスの二つ)を操作できる人が必要。ネットだけでバカ当たりする事実もあるが、自分の売りたい物を売る、広めるには、両社がバランス良く整えられることが必要なのではないかと思う。



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 かつて大抵の企業のリーダーにとっては、「経営(マネジメント)」こそが主な役割だった。企業が業務を遂行するのに必要なテクノロジーは「IT(情報技術)部門」が抱え込み、そのIT部門は競争優位の源ではなく、コストセンターとして扱われていた時代だ。

 だが今や、ネットワーク接続や人工知能(AI)、自動化の波が押し寄せる激動の時代を迎えた。この変化はビジネスの世界の深部にまで波及し、もはやどの会社も「テクノロジー企業」にならざるを得ない。

 言うまでもなく、急成長する新興企業はテクノロジーが骨の髄までしみ込んでいる。創業者または共同創業者の誰かがITの達人でなければ、そもそもこれらの企業は誕生していない。だが今では、最初のネットバブル以前に創業した会社も、非テク系企業として活動することはもはや不可能だと知るべきだ。エンジェル投資家のショーン・オサリバン氏はそう話す。同氏は「クラウドコンピューティング」という言葉の生みの親の1人だ。

 問題は、非テク系企業がどのくらい急速にテクノロジー企業に変貌しているのかだ。各企業がこのところ、最高経営幹部の一員にIT人材を迎えたりしていることが、その答えだと言える。

 別の言い方もできる。アマゾン・ドット・コムとの競争に直面したウォルマートがそうしたように、テクノロジー企業や専門知識を取り込むために重点的に投資するのか。それともシアーズと同様、破産申請への道を進むのか。

「2番手戦略」のウォルマート

 ウォルマートは、テクノロジーに強い「共同創業者」をどのように連れてくるかというケーススタディーになる。たとえすでに数千億ドルの価値があり、中国人民解放軍に匹敵する規模の人員を抱える大企業だとしてもだ。

 ウォルマートは2016年8月、ネット通販の新興企業ジェット・ドット・コムを33億ドル(約3700億円)で買収すると発表。従来型の実店舗を営む企業によるネット通販企業の買収としては過去最大となった。この買収の狙いは、ウォルマートの当時のオンライン事業のはるか先を行くジェットの技術を取り込むと同時に、社内に新たな意識を植え付けることにあった。ジェットのマーク・ロア最高経営責任者(CEO)は、前身のネット通販会社が2010年にアマゾンに買収されるまで、アマゾンと何年も競い合っていた。同氏はアマゾン幹部として2年間在籍したのち、退社してジェットを立ち上げた。

 ロア氏は現在、ウォルマートのネット販売部門責任者を務める。同氏を支えていた部下のうち驚くほど多くがウォルマートにとどまり、幹部の地位に昇進している。ウォルマートのネット販売部門は直近四半期に前年比43%の増収を記録した。外から見る限り、創業の地アーカンソー州ベントンビルに今も本社を構える同社は、シアトルの巨大ネット通販企業アマゾンに対抗する「セカンドムーバー(2番手参入)戦略」をうまく進めているようだ。

 だが必ずしもこれほど順調にいくわけではない。マサチューセッツ工科大学(MIT)のJ・ダニエル・キム氏によると、既存大手企業がエンジニアや幹部人材を引き入れる目的でハイテク新興企業を買収すると、大抵の場合は大惨事を招くという。同氏は最近発表した「買収による人材獲得」についての研究論文の中で、1995年~2011年に大企業の傘下に入ったハイテク新興企業4500社と従業員40万人がどうなったのかを追跡調査した。

 それによると、買収後3年以内に新興企業の従業員の60%が退社していた。競合他社への転職を禁じる契約を交わしていたり、長年在籍すれば株式を付与されるインセンティブがあったりした人が多いにもかかわらずだ。離職率は従来の方法で雇用された従業員の2倍にも達した。さらに悪いことに、退職した従業員は最も積極的で起業家精神にあふれるタイプという傾向があり、競合する新興企業を立ち上げる可能性が高いと思われた。

 キム氏は、実際の事実とは別の結果を想像する必要があると指摘する。ウォルマートもジェット買収でその「反事実的思考」を実践したはずだ。例えば、もし代わりにアマゾンがジェットを買収していたらどうなるだろうか。キム氏が考案した尺度によると、アマゾンはウォルマートよりも起業家精神が強い文化を持っているため、ジェットとの相性はぴったりで、離職率も低かったのではないかとみられる。そうなれば、ウォルマートにとっては競争上の打撃が一段と増していただろう。

シスコの買収ルール

 新たなテクノロジーによる破壊的な変化に直面し、他方では買収した新興企業の従業員離れという状況の板挟みになる大企業には一体何ができるのか。シスコシステムズのCEOを20年以上務め、その間180社の買収を指揮したジョン・チェンバース氏にはいくつか答えがある。 

 同氏は近著「Connecting the Dots(原題)」でいくつかのルールを紹介している。1つは双方の企業文化をすり合わせること。また、買収される企業がすでにある程度市場をけん引していること。さらに、ウォルマートとジェットの場合と同じく、買収先企業の幹部を昇進させ、経営上層部に加えることが不可欠だとチェンバース氏は説明する。

 チェンバース氏がシスコで守ったルールは、経営幹部の3分の1は社内で昇進させ、3分の1は外部からスカウトし、3分の1は買収で確保するというものだった。買収した事業を統合し、起業家精神あふれる従業員を引き留めることに熱心なあまり、同氏は主要幹部には社外で起業することを推奨した。それが軌道に乗ればすぐに買収し、時には数十億ドルを支払うことさえあった。この戦略は「スピン・イン」と呼ばれた。

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 それでも数多くの挫折にも見舞われた。買収のおよそ3分の1は失敗だったとチェンバース氏は振り返る。最も有名なのは小型ビデオカメラ「Flip」のメーカーを5億9000万ドルで買収したことだ。同社のFlip事業は、アップルのスティーブ・ジョブズ氏が一段と高性能なカメラを「無料で」提供すると宣言したのを受け、廃止に追い込まれた。それはアップルの携帯音楽プレーヤー「iPod Nano(アイポッド・ナノ)」に搭載された。

 競争環境がこれからも変化し続け、先端技術がビジネスのより本質な部分を占めるようになれば、数年前にはリスクが大きすぎると思われた投資が、場合によっては最善の生き残り策となるかもしれない。

 「フォーチュン500企業は今後10年で存続にかかわる脅威に直面する」。エンジェル投資家のオサリバン氏はこう話す。「創業10年足らずの企業が100年続く老舗企業を打ち負かし、超越するのをあなたは目の当たりにするかもしれない」

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